第4章 安全と私はもう似合わない

エマ視点

「エマ」

ウィンストンが、いつもの心配そうな顔でこちらへ歩いてくる。

「二年ぶりか。疲れた顔をしているな」

何時間も銃弾と逃走を繰り返した後では、ホテルのロビーに立つとまるで別世界に足を踏み入れたような気分になる。柔らかな照明がすべてを夢のように感じさせる。

「ウィンストン、あなたの助けが必要よ」

「君がここに来た理由は分かっている」

彼は暖炉のそばのソファ席を指し示した。

「ヴィクトルが懸けた賞金は一億ドル。世界中の暗殺者どもが、馬鹿みたいに色めき立っている」

彼は自らの手でウィスキーを注ぐ。記憶にあるより、その目元の心配そうな皺は深くなっていた。

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